いびきの原因は肥満?改善法と危険なサインを知っておこう
いびきがうるさい人=肥満体型の中高年男性、というイメージを持つ人は多いかもしれません。
実際は、年齢や性別、体型を問わず悩んでいる人たちがいるのですが、肥満がいびきの原因のひとつであることは間違いありません。
この記事では、肥満の人がいびきをかきやすい理由や、いびきを改善させる方法を紹介します。
病院を受診してほしいタイプのいびきについても触れているので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.いびきとは
いびきは、空気の通り道である気道が狭くなると発生します。何らかの原因で狭くなった気道を空気が通る際に力が加わり、気道の粘膜が振動して音が鳴るのです。
いびきが出る原因には、風邪などによる鼻づまりや疲労、お酒の飲み過ぎなどがあります。これらの場合、原因が改善すればいびきが治まるのであまり心配ありません。
しかし、毎晩のように激しいいびきをかいているのなら、何らかの病気が原因となっている可能性があります。この場合は、原因となる病気を治療しなければいびきは治まりません。
例えば、アレルギー性鼻炎で鼻が詰まっているためいびきが続いているのなら、アレルギー性鼻炎を治療することで、いびきが改善されます。
【参考情報】『Snoring』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/snoring/diagnosis-treatment/drc-20377701
2.肥満の主な原因
肥満の原因として、食生活や生活習慣の乱れがありますが、病気により体重が増えることもあります。
2-1.食べ過ぎ
食べ物から摂取するエネルギー(カロリー)が、体が消費するエネルギーよりも多いと、余ったエネルギーは脂肪として体内に蓄積されます。そのため、肥満につながります。
高カロリー・高脂肪・高糖質の食事やジャンクフードを食べる機会や回数が多いと、消費カロリーよりも摂取カロリーの方が多くなる傾向があります。
2-2.運動不足
食べ物から摂取するエネルギー(カロリー)が多くても、その分、体がエネルギーを消費すれば、肥満体型にはなりません。
しかし、仕事や家事・育児などで忙しいと、なかなか運動の時間がとれず、食べ物から摂取したエネルギーを消費できないこともあるでしょう。
また、運動不足によって筋力が低下すると、基礎代謝量も低下します。すると、ますますエネルギーが消費されにくい体となり、太りやすくなります。
2-3.加齢
加齢により基礎代謝量が低下すると、体で消費されるエネルギーが少なくなるので、太りやすくなります。
基礎代謝量とは、何もせずに安静にしていても、体内で消費されるエネルギーの量ですが、10代をピークにだんだんと低下していきます。
2-4.食生活の乱れ
ドカ食い、早食いなどの食べ方をしていると、食べる量が増えてしまうので太りやすくなります。
また、朝食抜きや、寝る直前の飲酒や食事は体脂肪が蓄積されやすく、肥満につながります。
【参考情報】『朝食欠食と生活習慣病』文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/eiyou/syokuseikatsu/kyouzai06/011.pdf
2-5.睡眠不足
睡眠時間が足りないと、満腹感を促すホルモンであるレプチンが減少し、食欲を刺激するホルモンのグレリンが増えます。その結果、食欲が増して食べる量が増え、太りやすくなります。
さらに、コルチゾールというホルモンが増加することにより、インスリンというホルモンが増加します。
インスリンには、糖の代謝を調節し、血糖値を一定に保つ働きがありますが、余ったエネルギーを脂肪として溜め込む働きもあります。
そのため、過剰になると食事から摂取したエネルギーが脂肪として体内に蓄えられ、肥満へとつながります。
2-6.二次性肥満
肥満は生活習慣とは別に、以下のような病気により引き起こされることもあります。
・クッシング症候群:コルチゾールが過剰となる病気
・甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンが少なくなる病気
・インスリノーマ:膵臓のβ細胞から発生する腫瘍
・脳腫瘍:頭蓋骨の中にできる腫瘍
また、ステロイドなどの薬の服用で、体重が増えることもあります。
3.なぜ、肥満体型だといびきが出やすいのか
肥満体型だと、気道が狭くなったり、ふさがれてしまうことで、いびきが出やすくなります。
3-1.のど周囲に脂肪がつく
肥満によって体に脂肪がつくと、のどや首周りにも脂肪がつきます。
すると、のどについた脂肪に圧迫されて気道が狭くなるので、いびきが出やすくなります。
二重あごになっている場合は注意しましょう。
3-2.舌に脂肪がつく
肥満体型の人は、首周りだけでなく舌にも脂肪がついていますが、脂肪のついた舌は、その重みで気道に落ち込み、喉の奥を塞ぎやすくなります。
その結果、空気の通り道が狭くなるため、いびきが出やすくなります。
特に、仰向けに眠ると重力も加わるので、より舌が落ち込みやすくなります。
3-3.睡眠時無呼吸症候群
肥満の人は標準体重の人に比べ、睡眠時無呼吸症候群という病気を発症するリスクが高いです。
腹部に脂肪が多い場合、肺が膨らむのを邪魔したり、気管を圧迫して空気の通り道を狭くしたりすることで、この病気を引き起こします。
睡眠時無呼吸症候群の症状として、激しいいびきがあります。
4.肥満を解消していびきを改善する方法
いびきがひどいと、周りの人に迷惑がかかったり、恥ずかしいと思う場面もあるでしょう。
そのような人は、以下の対策を試して健康的な体重を目指しましょう。
4-1.食生活の見直し
肥満を解消するためには、バランスの取れた健康的な食事習慣が重要です。
主食、主菜、副菜を、栄養バランスを考えて摂取し、1日3食を同じ時間に摂ることが良いでしょう。
早食いやドカ食いは食べ過ぎの原因となります。噛みごたえのある食材や食物繊維が豊富なメニューを選び、ゆっくりと噛んで食べるように心がけましょう。
【参考情報】『肥満の人の食事』千葉県栄養士会
https://www.eiyou-chiba.or.jp/commons/shokuji-kou/preventive/himan/
4-2.運動の習慣をつける
食事の改善とともに、運動も行ってエネルギーを消費し、筋肉量を増やしましょう。
おすすめは、ウォーキングや水泳などの有酸素運動です。さらに、筋力トレーニングを取り入れてもいいでしょう。
早く体重を落としたいからといって、いきなり激しい運動を行うと、続かないことがほとんどです。また、むやみに有酸素運動を行うと筋肉量まで減ってしまう恐れもあるので、無理のない量とペースで続け、習慣化していきましょう。
【参考情報】『健康作りのための身体活動・運動ガイド2023』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001171393.pdf
4-3.睡眠の質を上げる
睡眠不足は肥満の原因となります。多忙などで睡眠時間を確保しにくいようなら、睡眠の質を上げる工夫をしましょう。
休みの日は、つい遅くまで寝ていたいと思ってしまいますが、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きることが大切です。
また、寝る前のスマートフォンやパソコンは、眠りが浅くなったり寝付けない原因になるため、できるだけ控えましょう。
4-4.ウゴービによる薬剤治療
2023年、肥満症治療のための注射薬・ウゴービ(セマグルチド)が厚生労働省に承認され、保険診療で使用可能となりました。
ウゴービによる治療は、以下の条件を満たす人が対象となります。
・高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかがある
・上記に当てはまる人で、食事療法、運動療法を行っても十分な効果が得られない
・肥満度を測る指標であるBMIが35以上か、27以上で肥満に関する健康障害が2つ以上ある
処方できる医療機関はまだ少ないのですが、どうしても体重を落とすことができず、肥満のため健康に悪影響が及んでいる人は、薬による減量も可能となりました。
【参考情報】『FDA Approves New Drug Treatment for Chronic Weight Management, First Since 2014』FDA
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-new-drug-treatment-chronic-weight-management-first-2014
5.対策しても効果が感じられない場合
上記の対策を行ってもいびきが改善しない場合は、睡眠時無呼吸症候群という病気が原因かもしれません。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に気道が狭くなることで呼吸量が減ったり、一定期間完全に呼吸が止まってしまう病気の事です。
海外の調査では、肥満体型の方の4人に1人が軽度の睡眠時無呼吸症候群があるとされています。
男性では首周りのサイズが43cm、女性では41cm以上になると発症リスクが高くなります。
また、肥満指数(BMI)が高くなればなるほどに重症度が悪化すると言われています。
この病気の症状として、激しいいびきがあります。いびきの音は大きく、しかも一晩中続くことも多いため、周りで寝ている人から指摘を受けることも少なくありません。
また、呼吸が止まるたびに、自分では気づかなくても一瞬目が覚めているため、睡眠の質が下がります。
その結果、睡眠不足になり、仕事や勉強に集中できなくなることが増え、イライラすることもよくあります。
睡眠時無呼吸症候群は、主にCPAPという医療機器を用いて睡眠中の呼吸をサポートし、症状を改善します。
治療を開始すれば、睡眠の質が上がり、いびきも軽減されます。
6.おわりに
肥満体型の人は、減量して適正体重になると、いびきが軽減する可能性があります。しかし、適正体重になってもいびきが良くならないなら、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。
いびきに不安を感じる場合は、呼吸器内科で睡眠時無呼吸症候群の検査と治療を受けることができます。
睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、いびきだけではなく、心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクも高くなるので、思い当たる人は早めに病院を受診して相談してください。